以前書いた、私の願望などどこ吹く風、わが道をゆくといわんばかりの行き方は、ある意味清々しさを感じました。すでにほうぼうで指摘されているのでここでは書きません。やはりネット証券会社とはいえ民間企業ですから、儲けないことには生きていけないわけです。
カブドットコム証券執行役の臼田琢美氏による文章を読むと、このプロジェクトの目的が少しわかる感じがします。
この現状を改善していくためには、既存の対面での販売がほとんど占めるという状況を打破し、ネットでの販売比率を上げていく必要があると考えています。コストを下げたり、多様なニーズを反映した商品提供という点において、ネットでの投信販売は適しています。少なくとも、現状のように1~2%程度というのはあまりにも低すぎる。せめて3割程度はあって然るべき。
要は店舗を構えた対面式の証券会社の顧客を少しでも多くネット証券に持ってきたい、ということのようです。そのことでネット証券の存在感を増し、理想の状態(?)へ持っていきたい、という流れをお考えのようです。
それでようやく、上記サイトに書かれた、このプロジェクトの活動予定が腑に落ちました。
- 共同イベントの開催
- 共同キャンペーンの実施
- 投資信託に関する共同広告・PR展開
- 共同ウェブサイトの設立と、投資信託による資産運用の普及啓蒙活動
- 4社共同での書籍出版
- 4社専用投資信託の組成・販売
確かに、ネット証券会社にしてみれば、裕福な顧客を多くつかみたいでしょうから、対面式の証券会社からお客を引っ張りたいでしょう。しかし、その客層はおそらく、年配の資産家だろうと想像します。そのような人が、PCやインターネットに慣れていない人の割合も高いと想像されますが、わざわざ実店舗のない (SBIはありますが) 証券会社に、資産を移すでしょうか。
おそらく、対面式でも証券会社に口座を持っているような人は、金融関連の情報にも通じているでしょうから、すでにネット証券会社の存在くらいはご存知でしょう。10年くらい前から、ネット証券の参入のおかげで、株式の売買手数料が大幅に安くなったりしたことで、存在は知られているはずです。それで現状のように、臼田氏の話によると1~2%なのですから、なかなかいばらの道ではないでしょうか。もちろんそれに挑んでいるのでしょうけども。
ネット証券会社の取り組むべきは、残念ながら、年配顧客ではなく、インターネットに敷居を感じない、若い層の取り込みではないでしょうか。もちろん、そのような客は、これから資産形成を行っていく世代ですから、大した資産はないでしょう。しかし長い目で見れば、ネット証券で投資を始めた人が対面に移るということはまず考えられませんから、将来の優良顧客なわけで、そのような世代こそ取り込みをはかるべきでしょう。ネット証券は顧客の数に応じてカウンターのスタッフを増やしたりする必要がありませんから(サーバの増強は必要かもしれませんが)、スケーラビリティが高いはずで、一人ひとりは大した資産でなくても、それを人数でカバーする戦略が正攻法ではないかという気がします。
対面式証券会社の顧客を引っ張りたいと思うのは、会社経営のために短期的には大事だと思いますが、そのためには、対面式の支店を構えるしかない気がします。もしくはデジタルテレビへの補助金のように、インターネット回線つきのPCを配ってまわるか?
いずれにせよ、ネット証券本来の立ち位置を自覚していただき、それに見合った優良商品、サービスを提供していただきたいと思います。それが遠回りなようで案外近道かもしれません。